2008年度の活動内容
2009年1月
日本セールスレップ協会運営事務局
中小企業においては、高付加価値の製品を作っても売るルートをもたないことが問題となっています。このような企業は研究開発型の中小企業であることが多く、技術向上や製品開発に注力しているため、営業に力を割く余裕がない場合が多い。同様の事情を、第二創業により新たな分野への進出を考えている企業も抱えています。一方、現在の日本が直面している市場環境を見ますと、従来の"企業系列'の崩壊に代表される産業構造の変化への対応が求められており、新しい価値の源泉を基にしたビジネスモデルの構築が急がれています。
こうした問題に対し、公的機関が中小企業支援の一環として、中小メーカーとその販売先を結びつけるビジネスマッチングに取り組むなど、販路開拓サポートを行う例が増えています。
中小企業自書(2005年)でも、『一般的には「販路開拓」という言葉は、「営業活動という売り込むための手段」として捉えられがちですが、実際にはこうした活動は、営業活動だけで完結するものではありません。市場調査から始まり、「製品開発」、「流通」、「販売促進」を経て、これらの活動によりお客さまニーズを満たす製品を提供できるようになって、初めてお客さまを引き付けることができる』と記されています。
公的なセールスレップの注目すべき点は、中小企業支援策としての販路開拓であるため、中小企業の負担が少ないということ、支援の対象が経営革新計画認定企業など一定のレベル以上の企業であるため、取引先にとっても信頼性の高い相手となることから成約の可能性が高いこと、行政機関の名称を冠した名刺を持って活動することから信頼を得やすいということなどが挙げられます。
わが国ではセールスレップは経営マネージメントを身につけ、企業間取引に習熟した人材を育成することで、営業のみならず、事業戦略、販売戦略、販売促進戦略、商品開発戦略などに精通した人材が輩出されて浸透、定着化してきた歴史があります。
セールスレップの姿勢は「販売のプロ」であると同時に「プロのコーディネータ」です。
セールスレップのビジネスモデルには大きく何種類かあります。メーカーの総代理店的な存在となる形態、個別の商材についてフィーを得るという一般的なレップの形態、そしてコンサルタント的な形態等です。
さらに現在では、商品開発型、企画開発型、市場調査型、プロモーション型、展示代行などを得意とするセールスレップも登場しています。
わが国のセールスレップでは企業間取引に習熟した人材を育成することで、営業のみならず、商品開発、営業戦略、販売促進企画などの人材が育成され発展してきましたが、これからもセールスレップを目指す人にとっては、単にセールスレップといってもその形態や方法は同じではないということが言えるでしょう。
一方、専門のマーケティング知識、販売促進知識などを有し、販路開拓や商品開発助言のアドバイスを行なう「販路コーディネータ」や中小企業新事業活動促進法、中小企業地域資源活用促進法、知的財産権等を活用して活動している「ビジネスマネジメントアドバイザー」は、メーカーに販路開拓支援、経営面等からもアドバイスするなど、様々な専門家としての役割の活動がさらに求められています。
NPO法人としてスタートした日本セールスレップ協会は、これまでにも、経済産業省、中小企業総合事業団、中小企業庁や行政支援機関と販路開拓活動等を通じて、セールスレップ商談会、製品審査会、研修会、交流会等のご支援をいただきました。
(1) 推進体制
資格登録者構成メンバーはセールスレップ、コンサルタント、製造業、流通・小売業、サービス業、商社、卸売・問屋業、販売代理店、企業の営業指導者、営業幹部、営業担当、法人営業担当者、販売企画担当、商品開発担当、宣伝販促担当、バイヤー、教育担当、公的支援機関担当者、学生の方など企業勤務者、公務員、独立自営業者、就学者等など千差万別です。
独立事業者として成果を上げている資格登録者、企業への助言・アドバイスなどを専門としている資格登録者,得意分野で企業内で活動している資格登録者、あるいは販売の仕組みを学習している資格登録者もいるでしょうが、資格登録者同志は協力、手助けしあえる人柄の集まりです。
(2) 社会人人材育成制度の充実
資格登録者のための研修育成制度を強化します。企業の人材ニーズの把握、これに即したカリキュラムの策定、また、学校教育や民間・公共の職業訓練機関等、社会的に意義ある人材育成を目指します。日本セールスレップ協会は公益性の高い教育機関として推進展開を図ります。
(3)若年層教育制度の充実
産業構造や経済への基礎的な理解度や経験が浅い若年層に対しては産業界における状況を鑑みながら教育研修に取り組み、それにより専門学校及び大学等とも連携し、社会に巣立つ前の若年層からの教育の内容・カリキュラム内容の充実と反映を図ると共に、教育研修体系の構築とモデルケース的な取り組みを可能とする仕組みを目指します。
(4) 社会からの信頼獲得
日本セールスレップ協会の信用力と知名度を高め、資格登録者の販売先からも社会からも広く認知、信頼が得られように推進しなければなりません。資格登録者としての成功は当協会の成功であり、強い公益性を意識した団体活動を目指します。
各種の産業界からも、さらに教育機関などからも信頼を得、社会的にも共感の得られる活動であることが基本です。これにより資格登録者個人や関係企業、取り巻く多くの人々にまで拡がり社会の活性化へと繋げます。
本年度も、さらに多くの行政及び公的支援機関との連携をいただき、現在取り組んでおります。
日本セールスレップ協会では昨年度、活動をさらに推し進め「高度なセールスレップシステムの仕組み化」作りに取り組みました。
それは「モノを作ってしまってから売れない」という新たな課題が沸きあがっているからです。
そのため、経営者のリスクをさらに減らすため、またセールスレップが効率的かつ有効に機能するために今回の事業では「プロトタイプにおけるセールスレップの取り組み」を中心に研修を行い「プロトタイプ(試作品)取扱いのための統一基準」を策定し、その普及講習会を全国拠点で展開しました。
さらに、近年、地域ごとに設立され始めたセールスレップ団体組織や企業と連携しながらこの「プロトタイプ取扱いのための統一基準」がさらに有効に機能するように普及講習会(資格登録者無料)を実施いたしました。加えて将来を見据えたビジョンの構築を行ないました。
これによりセールスレップの整備基盤をさらに一歩推し進め、本事業がその起爆剤として日本版セールスレップの歴史にまた新たな一石を投じるものになれば幸いです。
これまでの活動から
(1)協会は平成15年10月より、地域のセールスレップ、販路コーディネータ育成活動の普及策として、 「セールスレップ研修制度」の業務を行ってまいりましたが、昨年度までで全国主要10都市で「セールスレップ研修」と「資格認定試験」を実施し、1000名以上の受験者に達しています。
各行政機関等も販路開拓事業の計画を策定する際に、当制度の資格認定者を活用するといった施策連携が定着しつつあり、派遣の結果が実績に結びつく傾向も一層高まってきています。
(2) 平成18年には全国中小企業中央会の採択事業として経済産業省認可JSR(セールスレップ協同組合)が推進する「レップラウンド(レップ商材の全国多角的取引マーケット)」事業おいて、セールスレップ商材統一化委員会のシンクタンク並びに事務局として参画しました。
来年度は、セールスレップ、販路コーディネータ、ビジネスマネジメントアドバイザー制度の狙いとする中堅・中小企業販路開拓(促進のためのツール)として広く活用が期待される「セールスレップ統一基準書」をさらに向上し構築してまいりたいと考えます。
(3)日本セールスレップ協会は、セールスレップ白書ともいうべき「セールスレップマーケティング調査」に取り組みました。平成20年度も引き続き、セールスレップ事業におけるマーケティング調査活動を実施してまいりたいと考えます。
(4)わが国の「セールスレップ、販路コーディネータ制度の新たなステージ」に向けたセールスレップビジョンの提示を目的として、全国中小企業中央会実現化事業において構築した「セールスレップビジョン報告書」が、平成19年1月に発行されました。
協会では、この報告書の中にセールスレップ活動の成果と課題を踏まえた「セールスレップ、販路コーディネータとビジネスマネジメントアドバイザーの普及促進の重要性とその政策対応」として、将来の公的なセールスレップ・システムの取り組みと販路開拓支援事業の推進において、商品に精通したプレーヤーとしてのセールスレップと販路コーディネータ、ビジネスマネジメントアドバイザーが今後ますます重要な役割を担うことを期待を込めて提言させていただきました。
(5)販路開拓支援事業においては、各都道府県、地域の産業振興公社や推進機構、商工会議所や商工会、金融機関等と協会が連携し、「行政機関職員向け研修」や「経営者向け研修」、「セールスレップ創業研修」など、17都道府県の事業に参加し、延べ200名余のセールスレップ、販路コーディネータが参加して実施され、その認知度向上とメーカー.販売先、レップの三位一体によるビジネス拡大を進めることができました。
日本セールスレップ協会は、本年度も日本におけるセールスレップの普及とその地位の向上を図るため、セールスレップとしての資格認定制度を設けさせていただき、中小ものづくり企業へのセールスレップシステム導入を中心とした仕組み作りの専門家、あるいは経営コンサルタント、メーカー経営者などによって支援体制を確立し、今後も資格認定制度の拡充をしてまいりたいと考えます。
2007年度の活動
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