<これまでの研修事業から>
セールスレップは近年、メーカーと販売先を結ぶ橋渡し役として
注目される職業となってきました。
特に、中小企業やベンチャー企業には優秀な営業マンを育てられない、販売ルート先を開拓できるノウハウがないなどの理由で、優良な商材・商品が埋もれていることが多く、この「セールスレップ」が注目されています。また、販売員を社員として雇用、教育するだけの余裕をもたない中小・ベンチャー企業では、「セールスレップ」は、販売機会拡大のコーディネータ-役として期待されています。
「セールスレップ」は、わが国で徐々に認知され始めてきました。
「セールスレップ」は、とくに商社マンをはじめ販売経験を有する退職者・失業者や技術者層にとっては経験・体験を活かせる分野であり、一方商材をもつ中小企業やベンチャー企業にとっても必要とされる職業です。
決まったメーカーや企業の商材しか扱わない販売販売では、従来型の[代理店]になってしまっています。自らの選択眼でセレクトした複数メーカーの複数の商材を扱うのがセールスレップです。
また、セールスレップとして成功するためには、「提案力」も必要です。 顧客との接触から得られた知見や販売展開手法などを商材メーカーに伝え、時には商材や売り方の改良に向けての提言をメーカーに行うことも、セールレップにとっては重要な仕事のひとつです。
平成15年9月に経済産業省の肝煎りで立ち上がった、「日本型セールスレップ・システムの普及・実践検討会」の委員として私は任命されました。
この委員会には、全国で日本型セールスレップ・システムを深く研究しているメーカー、セールスレップ企業、学識経験者、商工会議所、シンクタンク、マスコミなどの関係者20名ほどが、委員及びオブザーバーとして参画しました。
この中のオブザーバーとして参加したマスコミ関連の方が書かれた記事が、次のような内容を伝えています。
「アメリカではかなり普及しているこの販売システムが、日本ではまったくと言っていいほど馴染みが薄い。それは、セールスレップの普及という観点に絞って言うと、日本独特の流通構造と商習慣が「大きな壁」となっているためだ。
日本独特の流通構造とは、一例を挙げるなら、メーカーと小売業との間に他段階で関わってくる卸業者の存在がある」(2003/09/05 プレジデントニュース・プレジデント社)。
実は、わたくしごとで恐縮ですが、日本経済新聞にセールスレップに関する記事が掲載されたました。その内容を少しここでご紹介させていただきます。
「専門的な知識を背景に、企業・団体に対して複数の商材を提供し、バックアップオフィスのサポートも受けながら、提案型で販売を行う事業者のことを、(私は)日本型セールスレップと定義したい。
あくまでも顧客(企業・団体)の立場にたって、顧客に満足される商材を提供することがその役割であり、すでに存在する商材をただ売り込むのではなく、顧客の状況にあった形で用途開発を行い、また商材を一部バージョンアップするなどの変更を加えてでも提供する姿勢がセールスレップの真髄だといえるだろう」
(日本経済新聞朝刊掲載 2003./10.07 小塩稲之)。
セールスレップシステムが少しづつ社会的にも注目される中、2003年度には、中小企業総合事業団新規開拓事業「セールスレップで起業する実践的研修セミナー」を私どもは開催しました。
この研修事業は、日本型セールスレップに共感していただき、私たちの提言を柔軟に受け入れる姿勢のある中小メーカー企業の20社程度を参加メンバーに加えさせていただくことにしました。
メーカーをメンバーに加えたのは、中小ものづくり企業への導入を中心としたセールスレップ・システムのセミナーとして、実務的でかつ起業に直結できる研修事業を行いたかったからです。
この研修の応募部門の状況は、流通系セールスレップ商品を希望する受講生が半数以上を占めました。それに続く、機械工業系の2部門で研修受講者の7割という結果になりました。このことから、日本型のセールスレップの扱い商材におけるレップ希望商品分野の、人気のバロメーターを少し推し量ることができたのではないかと考えています。
研修受講者中、性別では女性が80名余中2名と少なく、 年齢的には40~50代の方が8割を占め、20~30代の方がほぼ残りの部分を占めました。職業的には、脱サラ組と現サラリーマンの方が圧倒的に多かったのが印象的でした。しかし、現在では、女性の方もセールスレップとして、活躍される方が増えてきています。
(現在は、正社員としてフルタイムで働く女性ばかりでなく、結婚して子供ができた後も派遣社員やパートタイマーとして働く女性も増えています。
セールスレップレディにとっての利点は、組織に縛られることなく自分の裁量で仕事ができること、成果に見合った収入が得られること、テリトリーが保障されているため不必要な競合がないこと、ノルマなどもないケースが多いこと、商品の仕入れや保管の責任を負わないので初期資金や運転資金が僅かで済むことなどです。)
この研修では、特にセールスレップのために、マーケティングをとらえ、販売先へ販売するための運営上のノウハウ支援を行うことができたのではないかと考えています。研修では、販売チャネル・製品需要予測をコンサルタントできる人材の支援組織に重点をおき、カリュキュラムを策定しました。
そのような研修を行いながら紆余曲折、これまで研修事業を展開してきましたが、私どもがまず、踏まえなければならない課題は、このセールスレップ・システムを広く社会に認知されるよう、わが国の流通構造改革や販売革新に貢献することにより、低コスト・高生産性の仕組みを作り上げることであろうと考えています。
そのために、今後私どもが取り組まなければならないことは、中小ものづくり企業へのセールスレップシステム導入を中心とした仕組み作りを専門家、あるいは経営コンサルタント、メーカー経営者などによって支援体制を編成し展開することだと思います。
同時に、市場に合わせた取引ルールを、常に改善していくための場所や機会を提供していくことであろうと考えています。
今後とも、皆様方がセールスレップとして、飛躍していただけるよう、本協会がサポートさせていただくことができれば、幸いと考えています。
何卒、皆様のご支援を賜りますよう、心からお願い申しあげます。
日本セールスレップ協会会長
小塩 稲之
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