セールスレップ発展の歴史と育成制度
日本の経済史を振り返えると、戦前にセールスレップに似た販売代行業があった。しかし、この当時の日本では卸売業・問屋などが興隆を極めていて、この販売代行業はビジネスとしてのワークスタイルまでには至っていなかった。
そして時がたち、市場に物が豊富に氾濫している時代が来た。"生産者がいくら良いものを作っても、顧客のニーズに合わなければ、注文も来ないし、ビジネスにならない時代"がやってきた。
多くの中小企業経営者はモノづくりは分かるがマーケティングマインドがないこともしばしばあり、お客の目線でビジネスを考え、モノを作ることになれていなかったためである。いかに、顧客の目線で情報を入手し、考えることができるか、が求められた。そして、現在では"提案型営業ができるセールスレップ"が製造事業者に望まれている。
一方、大きな視野から中小企業の経営の実態をみると、どうだろうか。20世紀後半から日本では多くの大企業が廉価な労働力を求め、東南アジアなどの海外に生産工場をシフトしてきた。その影響で大企業の仕事をしてきた多くの中小企業が仕事を失い、倒産や廃業をせねばならない経営的なダメージを受けた。
その中には技術力のある中小企業も沢山あり、国や政府に経営支援を求めたこともあった。
そこで国や政府は産業振興の一環として、中小企業の販路開拓支援事業を行った。その時、国や政府は大手商社、専門商社に支援を求めたが、中小企業のビジネスにマッチせず実績が上がらなかった。
その頃からセールスレップ専門の企業も出始めていたが、まだ規模も小さく、力も弱い存在だった。この状況をみて当時、経済産業省関東経済局産業企画部長の藤和彦氏はアメリカで実績のあるセールスレップに注目、2003年に経済産業省セールスレップ普及検討委員会を設立した。
それまでセールスレップを研究し、その委員でもあった小塩稲之氏が経済産業省と連携し、2004年にわが国で初めてセールスレップ協同組合(JSR)を設立した。それまでにもNPO法人の代表としてセールスレップ育成に力を注いでいた同氏はセールスレップの資格認定機関として日本セールスレップ協会を正式に発足させることとなった。セールスレップ組織が中小企業の販路開拓支援事業となることに望みを託したのである。これが日本版セールスレップの幕開けとなった。
セールスレップの育成制度について
日本セールスレップ協会は、セールスレップ活動の先駆的役割を果たすとともに、(1)「セールスレップ交流会」、(2)「公的セールスレップ・販路開拓支援事業」、(3)「セールスレップ商談会」、(4)「セールスレップ商材検討会」、(5)「資格認定制度」の5つの柱を基本に、わが国で最初の取り組みを行った団体として知られております。
今日もその活動を基本にしつつ、現在では(6)「製品企画開発・研究、プロトタイプ調査」、(7)「全国ビジネスプラン・経営支援事業」など事業が拡大し、これを推進しています。
日本セールスレップ協会は、マネジメントマーケティングの提唱者小塩稲之が設立した団体です。平成13年度に協会の前身であるNPO法人(eラーニング推進協会)のセールスレップのためのマーケティング調査研究活動の取り組みからその歴史が始まります。
平成14年度には、他の財団法人、NPO法人によるネットワーク団体を中心に中小企業総合事業団(現中小企業整備機構)から新事業開拓支援助成金をうけて「SOHO事業者」育成のための研修事業(中小企業総合事業団新規開拓事業)」を開催しました。
平成15年度には、当時理事長(現会長)であった小塩稲之がその年に開催された、経済産業省関東経済産業局「日本型セールスレップ・システムの普及・実践検討委員会」に委員として任命されました。
その年には、NPO法人によるネットワーク団体を中心に中小企業総合事業団(現中小企業整備機構)から新事業開拓支援助成金をうけて「中小企業総合事業団「セールスレップ」ビジネス育成のための実践的研修事業(中小企業総合事業団新規開拓事業)」を開催しました。
平成16年度も継続的に「セールスレップ育成研修」を実施し、その継続展開としてその年の9月に経済産業省の助成金を得てセールスレップ事業協同組合が立ち上がりました。
平成18年度は総務省の信頼と実績のあるテレワーク事業団体として紹介され、当年11月10日(金)に行われた社団法人日本テレワーク協会の審査会において、
平成18年度テレワーク推進賞の支援・活用部門「奨励賞」を経済産業省認可JSRセールスレップ協同組合が、平成22年度には「経営士アワード特別賞」などを受賞することができました。
平成22年度は、「農商工連携コーディネーター人材育成研修」を全国中央会からの研修機関として認定を受け実施しました。農商工連携とは、国が推進する事業として、地域資源を有効に活用するため、農林漁業者と商工業者の方々が互いの「技術」や「ノウハウ」を持ち寄って、新しい商品や
サービスの開発・提供、販路の拡大などに取り組む事業活動です。
このように、日本セールスレップ協会は、経済産業省認可のセールスレップ協同組合とともに、わが国のセールスレップの普及において、先駆的役割を果たしたとともに、セールスレップ交流会、販路開拓支援事業、セールスレップ商談会、セールスレップ商材検討会、資格認定制度など、どれをとっても、わが国で最初にセールスレップ全般にわたる活動を構築、多くの実績と歴史を持つ団体です。
今日では、さらに各都道府県、市町村等、行政支援機関様から多くのお声がけをいただき、公的セールスレップ販路開拓支援事業、公的助成金評価委員、公的製品評価委員などに、販路コーディネータ、セールスレップ派遣等の事業委託を受け、より実践的で公明な支援活動をさせていただいております。
一連のこうした動きは、各都道府県、市町村等地方自治体、商工会議所、商工会、全国中央会様等からご注目をいただき、企業、学校、社会人教育などにおいても、このセールスレップの実践ノウハウをご提供することで、営業力、商品力、マーケティング力強化による営業人材の育成に取り組むなど、今日にいたっております。(1)平成19年度の販路開拓支援事業は、各都道府県、地域の産業振興公社や推進機構、商工会議所や商工会、金融機関等と協会が連携し、「行政機関職員向け研修」や「経営者向け研修」、「セールスレップ創業研修」など、17都道府県の事業に参加し、延べ150名余のセールスレップ、販路コーディネータが参加して実施され、その認知度向上とメーカー.販売先、レップの三位一体によるビジネス拡大を進めることができました。
また、協会は平成15年10月より、地域のセールスレップ、販路コーディネータ、ビジネスマネジメントアドバイザー育成活動の普及策として、
「セールスレップ研修制度」の業務を行ってまいりましたが、昨年度は全国主要10都市で「セールスレップ研修」と「資格認定試験」を実施し、セールスレップ3級には,応募者513名、合格者418名(92%)、セールスレップ2級には受験総数103名、合格者73名(71%)に達しています。
企業、学校などにおいても、当協会の資格認定制度を活用するといった施策連携が定着しつつあり、研修、試験の結果が実績に結びつくという傾向も一層高まってきています。
(2)全国中小企業中央会の採択事業として経済産業省認可JRM(セールスレップ・販路コーディネータ協同組合)が推進する「レップラウンド(レップ商材の全国多角的取引マーケット)」事業おいて、平成18年にはセールスレップ商材統一化委員会のシンクタンク並びに事務局として参画しました。
(3)わが国の「営業のプロ・セールスレップの新たなステージ」に向けたセールスレップビジョンの提示を目的として、全国中小企業中央会実現化事業において構築した「セールスレップビジョン報告書」が、平成19年1月に刊行されました。この報告書の中にセールスレップ活動の成果と課題を踏まえた「セールスレップの普及促進の重要性とその政策対応」として、その活動実績を公表することで透明性の高い、セールスレップ・システムの取り組みと普及促進、商品に精通したプレーヤーとしてのセールスレップが、今後ますます重要な営業人材としてその役割を担うことを、期待を込めて提言させていただきました。
平成19年度からは、セールスレップ研修、試験制度の狙いとするプロフェッショナルな実務経験とコンサルティング能力を身に付け、常にスキルアップする、「営業のプロ」を育成し、社会に信頼される資格認定制度を構築してまいりました。
(4)協会では、平成19年度から学校教育における取り組みとして、専門学校・大学と連携し、実社会で役立つカリキュラム構築を行ってきました。また、セールスレップの育成に留まらず、そのノウハウを企業での人材育成支援で活用していただいています。特別研修など、営業人材育成研修、リーダー研修、幹部研修など、次世代のビジネスリーダーの育成を行っています。さらに、社会人教育としては、公的職業訓練校、ハローワークなどの研修における取組みも実施してきました。当協会が認定するセールスレップ資格者は、ビジネスリーダーとして、その専門分野で幅広く活動しています。
(5)セールスレップ白書ともいうべき「セールスレップマーケティング調査」をJSRと取り組んでいます。この調査活動は平成18年度から始まり、継続的にセールスレップ研修や事業活動におけるマーケティング調査活動を実施しています。
本年度もセールスレップ資格認定機関として、「営業のプロ」としての人材育成と資格試験及び研修を行ってまいります。さらに、日本における営業人材の拡充強化とセールスレップの普及、地位の向上及び交流を図り、営業力、商品力、マーケティング力強化による営業人材の育成に取り組んで参りたいと考えています。
今後とも、ご支援、ご協力のほど、よろしくお願いします。
日本セールスレップ協会
事務局
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