日本総研 芦田弘
日本型セールスレップの普及を目指して、(2001年団体活動を開始)2004年にJSRセールスレップ協同組合が設立され、資格認定機関である(※注)日本セールスレップ協会のセールスレップの資格認定者は延べ1,000事業者/人を超える規模となり、それぞれの活動の幅も徐々に広がってきた。
いま、日本のセールスレップはどのような状況にあり、どう進化してきたのか。
◆求められるコンサルティングとマーケテイングの能力
いま、行政にとっては、地域起こしや中小企業の活性化が大命題となっています。経済産業省がセールスレップの普及・振興に取り組んだこともその対策の一環といえますが、名もない地場の小さなメーカーが大消費地である東京や大阪で勝負していくためには、商品コンセプトや価格設定といったマーケテイング全体についての見直しをしなければなりません。
いくらいい商材だったとしても、中小メーカーには大企業のようにそれをブラッシュアップする経営資源がないため、中央のマーケットで生き残ることのできるレベルにまで自力で引き上げることは難しいのです。
その部分で、商材に対する目利きはもちろん、マーケテイングの知識に長けたレップの存在が求められているといえます。
日本セールスレップ協会の鈴木和正事務局次長さんは、そのまま市場に出して売れそうな商材は全体の10%あるかないかと述べていますが、セールスレップがメーカーに対してコンサルタントのようにアドバイスをし、商材を磨き上げなければ、販路開拓できるレベルにすらたどり着けないという現実があるわけです。
◆価値あるものを原石のうちに探し出す スタンスが必要
ここ数年でセールスレップをめぐるさまざまな動きがあり、周囲の環境も変化しつつありますが、セールスレップは独立した営業のプロフェッショナルであるという基本は変わりません。
会社をリタイアした後に自分のペースでいままでの経験を活かしたいという方(紹介レップ)もいれば、全国レベルで売れるヒット商品を発掘しようと大きな夢を抱いている方もいると思います。また、組織の論理でただ数字を上げるというのではなく、自分の理念に基づいた営業活動をまっとうできるという点からもレップは魅力的に映ります。
※紹介レップ
紹介型セールスレップの略。中小メーカー企業の販売に関する支援として、営業先の紹介、提案準備の指導、商談の同行などが、紹介レップの役割です。
かつての大量生産・大量消費という時代から、真に価値やセンスがあり、地球環境にも配慮した個性ある商品が求められる時代に転換してきました。
このため、これからのセールスレップは、ただたくさん売れるものを探すというのではなく、 本当に価値あるものを原石の段階で発掘するというスタンスも必要になってくると思います。
それはややもすると、大きな組織に所属する営業パーソンよりも、自由な発想をもち、小回りの利くセールスレップのほうが有利なのかもしれません。
◆行政、大手企業も興味を持ち フォローの風が吹いている状況
このような自由さがセールスレップという職業のよいところですが、どんなスタイルをとるにしろ、営業そのものや商材への熱い気持ち、高い志やプライドがなければ続けていくことはできません。知識ももちろん重要ですが、やはり最後は意欲や気力がモノをいいます。
今後、日本型セールスレップがどのような形に発展していくかはわかりませんが、ビジネスの成否はレップ個人の能力に負うということに変わりはありません。そして、行政機関の関与や大手企業からの参入の動きが活発化してきたことを鑑みれば、間違いなくセールスレップにはフォローの風が吹いているのです。
経験、知識、そして高いモチベーションとプロフェッショナル意識を持ち、人格的にもすぐれたセールスレップがいま以上に増えれば、また新しい視点や流れが生まれてくるのだと思います。
日本実業出版社発行営業雑誌記事より引用
公的機関がセールスレップの形態に着目し、その運営に乗り出したということは、レップの将来性が認められて1つの大きな流れができつつあると見ることもできます。
このような動きによって今、『セールスレップは地方に埋もれているすぐれた商材を発掘するプロ』と見られるようになっています。
(※注)日本セールスレップ協会
日本セールスレップ協会は、平成15年に経済産業省関東経済産業局の産業クラスターの委員会で提唱された「日本型セールスレップ・システムの普及及び実践」の趣旨から設立された、わが国唯一のセールスレップ資格、販路コーディネータ資格認定機関である。
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