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商工リサーチ ザビジネスサポート2006年11月号掲載記事
日本セールスレップ協会[販路開拓支援]
メーカーから独立した契約販売員が眠れる優良品の販路を開拓
せっかく高度な技術を駆使して優良な製品を開発しても、販売担当者がいなければ思うような販売には結びつかない。そこでお勧めするのがセールスレップの活用だ。
販売力を高めたい企業の強い味方として、近ごろ存在感を高めているのが、セールスレップだ。セールスレップとは、メーカーからの委託を受け、その商品の販売先を開拓する販売代行者のこと。メーカーの販売社員という立場ではなく、メーカーから独立した存在で、商品ごとに契約を結び、セールスレップが持つ独自のマーケティング知識を武器に販売を展開する方法だ。
これまでの日本では、メーカーと顧客の間に卸売業や問屋が介在し、多段階の流通システムが取られていた。一方、セールスレップを使った販売システムは、メーカーが直接顧客に対して販売することになる。そのため、セールスレップは販売代行だけでなく、メーカーと顧客を結ぶ橋渡しの役割を担う存在としても注目されているのだ。
そんなセールスレップの普及と地位向上のために資格認定を行い、セールスレップとメーカーを結びつける役割を果たしているのが、セールスレップ協会だ。
審査会で製品を選別
「セールスレップは、上手に活用すれば間違いなく販売力の強化につながります。しかし、セールスレップをどのように活用すればいいのかわからないとか、そもそもセールスレップ自体をご存じない経営者の方も多いんです。ですから私どもでは、日本にセールスレップを定着させるためにさまざまな活動を展開しています」
そう話すのは、セールスレップ協会理事長の小塩稲之さんだ。
セールスレップ協会の事業は主に3つ。1つはセールスレップの資格認定事業。資格がなくてもセールスレップとして活動することはできるが、一定の質を維持し、メーカーに安心して活用してもらうために、資格制度を設けているという。
2つめは、販路サポート事業だ。全国の地方自治体や企業支援機関・商工会議所などと連携してセミナーを開き、中小企業の経営者を集めてセールスレップの活用方法をレクチャーする。また、販路を開拓したい商品を持参してもらい、その商品の審査も行っているという。
「どんな商品でもいいというわけではなくて、まずはその商品が本当に市場に受け入れられるかどうかを審査します。メーカー側が設備投資をし、研究を重ねて技術レベルの高い商品を開発したとしても、それが必ずしも売れるとは限りません。世の中のニーズからズレていたり、パッケージの訴求力が弱かったり……。とくに中小企業は、その傾向が強いんです。
また、経営者の経営力というか、その商品の販売計画や対応策が地に足が着いたものかどうかも審査の対象になります。それらを総合的に審査して、セールスレップに橋渡しできるかどうかの判断を下すのです」
実は、この審査を通るのは
50社に1社くらいしかないそうだ。厳しいようだが、小塩さんにいわせれば“当たり前のことを、当たり前に審査しているだけ”とのことで、この目利きの高さが同協会のウリでもある。逆にいえば、この審査を通ればセールスレップに取り次いでもらうことができ、販路が開ける可能性が高いというわけだ。
人的ネットワークで販売機会を拡大
もう1つ、協会の事業の大きな柱として成長しつつあるのが、商談会と呼ばれる交流会だ。これは協会に所属する全国のセールスレップとメーカーが一堂に会した懇親会で、協会の手を借りずにセールスレップと知り合ったり、商材を見つけたりできる場だ。
「われわれは、メーカーから持ち込まれた商品を審査してセールスレップに紹介する、もしくは売りたいと手を挙げるセールスレップを募集することで、メーカーとセールスレップの仲介役を務めています。でも、それだけでは広がりが少ないんですよね。そこで、懇親会を開くことにしたのです。
メーカーもセールスレップも、自分たちでパートナーを開拓することができますし、セールスレップ同士の横のつながりもできるんですよ」
セールスレップは得意とする地域・販路を持っており、それを武器に活躍している。そういった情報交換をする場を提供し、販売機会の拡大につなげてほしいと考えているのだ。
「たとえば九州のメーカーが商材を持っていて、それを東京で売りたいとなったら、まずは東京のセールスレップと契約を結びますね。ところが、さらに販路を北海道に広げたいとなっても、東京のセールスレップには依頼することができません。そんなとき、安心して任せられる北海道のセールスレップと知り合っておけば依頼することができるし、付き合いの深いセールスレップから、新しい地域のセールスレップを紹介してもらうこともできるのです」
こういう人的ネットワークを築くことが、この商談会の目的だ。そして、セールスレップを活用するメリットは、まさにこの部分。優秀な営業マンを育てられない、販売ルート先を開拓できるノウハウがないという理由で優良な商材・商品が埋もれてしまっている中小企業でも、セールスレップを活用すれば全国どこにでも販路を開拓することができ、販売機会を拡大することができるというわけだ。
低コストで幅広く活用
セールスレップというと、営業マンを持たない中小企業が活用の中心と思われがちだが、大手企業でもセールスレップの活用価値が高まっている。
たとえば、ロイヤルカスタマーと呼ばれる大口顧客は正社員がフォローしていても、人手が足りず中小企業のフォローまで手が回らないことがある。こういう場合にセールスレップを活用し、中小企業をフォローするケースがあるという。
また、新規事業を立ち上げた際の導入時の検証に、セールスレップを活用する方法もある。正社員を大量に異動させて新規事業に取り組んでも、思うような結果が出ないために半年もしないうちに撤退するようでは、企業にとっても社員にとっても負担が大きい。しかしセールスレップを使えば、ダメージは少なくて済むだろう。
あるいは、既存の販路以外に新規ルートを開拓したいというときにも、セールスレップが役に立つ。
「セールスレップの活用にあたっては、コスト的なメリットも見逃せません。セールスレップへの報酬は、商品販売の契約が成立した段階で初めて発生する仕組み。だから、無駄なコストをかけずに全国に販路を開拓することができます」
ただし、販路開拓を任せきりにするのではなく、場数を踏んでいるセールスレップのアドバイスや提案を受け入れることも大事だという。セールスレップとの二人三脚が、販売力を高めるための近道といえそうだ。
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